匿名

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匿名(とくめい)とは、明確な人物像を隠し、誰であるのかがわからない状態を指す。

概要

匿名として活動することで自身の所在を暴かれずに、告発といったリスクのある行動をしやすくなる。

匿名性が保証された方法で権力者や企業の不正を暴露することで、告発者が不当な弾圧や差別を受けることなく不正を公にすることができる。

また、寄付を初めとした社会的善行も、名前を隠して寄付をおこなうことで、売名のために寄付したのではないことを示すことができ、かつ周囲から余計な詮索を受けずに寄付をおこなうことができる。

一方、匿名性は悪事を助長しかねない一面があり、特にインターネット社会となっている現在では後述する理由で負の一面が強く見られる。

ネットワークにおける匿名

インターネットが一般に普及する以前に盛んであったパソコン通信においては、通常、各個人に対して一つのIDが発行されていた。この環境では、IDをもちいずに書き込みなどの活動をすることは困難であった。また、通常書き込み者のIDも他者にわかるようになっていた。

そのような流れから、パソコン通信に参加していた者の間ではインターネット上でもハンドルのもとで自身の発言・行為に責任を負うのがネチケットとされることがあった。しかし、一般人の間にもインターネットの利用が普及するにつれ、パソコン通信の経験のない者が増え、日本では例えば巨大匿名掲示板・「2ちゃんねる」の台頭もあって、自身固有のハンドル名を使わずに活動する匿名行動が広く見られる。

匿名から発生する問題

前述の通り姿形が公開されないネット世界では暫し其を悪用される事が多い。

以下匿名で発生する主な問題を挙げる。

  • 対象となる作品、または個人に対して誹謗中傷行為。
  • 攻撃対象に事実無根な噂を流し、さも事実であるように確立させる。
  • なりすまし行為による、対象者への評判を低下させる。
  • 虚偽の出来事を吹聴したり、作品同士の対立煽り・個人の粘着行為をいつまでも行う。(風評被害を増長させているという意見も。)
  • 特定の人物へ度を超えた書き込み(殺人予告や個人情報暴露)がなされる。
  • 特定のサーバに対し多大な負担を掛けてダウンさせるなどといった極端な荒らし行為。
  • 自らの犯罪行為・体験について赤裸々に語るなどといった犯罪に関わるような発言をする。
  • 上記のような悪質な書き込みをしても、他のユーザから追及を受ける・正体をあばかれるという危険性は基本的に少ない為に、荒らし行為が後を絶たない。

また、上記の悪質な書き込みを行う利用者の影響により、

  • 一般的に、インターネットでは自分の正体を明かさぬままに自由な発言や行動ができるものだという間違った認識。
  • 特別の理由が無い限りはユーザは匿名で書き込む事が基本。

という匿名というシステムを誤解した不特定多数の匿名の利用者が集まり、 アンダーグラウンドな文化を形成していった。『匿名が人を悪魔に変える』という意見がしばしばなされる。

それがチャット電子掲示板で他人への誹謗中傷を繰り返す者の発生を招くなどの犯罪の温床を作り出している、という意見もある。なお、犯罪予告に関しては2011年2月に、新宿駅前にて通り魔殺人を起こす、との匿名による殺害予告に対し、警察が翌日には犯人を特定して書き込みをした中学3年生を逮捕した事例など、匿名によるインターネット上での秘匿性は限られたものになってきている。

匿名に関する学術的な研究

イギリスのリチャード・シェリー博士が行った調査によると、ソーシャルメディアを利用する人は、他人との「共感」や「思いやり」を感じにくくなるそうだ。また、怒りに駆られて冷静な判断ができず、攻撃的な対応に出ることもあるという。

心理学では、社会での仮面的な人格を「ペルソナ」と呼ぶ。「ある人に電気ショックを与えてください」と被験者に頼んだ実験がある。

その際、

A.「仮面をつけ、かつ匿名で参加した場合」
B.「顔と名前を出して参加した場合」

の2パターンで実験すると、明らかにAの方が、電気ショックの量が多くなったという。人間は、「誰だか分からない」状態にすると、理性のカバーがゆるみ、本能的なものや攻撃的な面が、強く出てしまう…というわけ。これを「仮面効果」という。

心理学用語では「没個性化」というものがある。集団・群集状況では個人状況と異なり、平生は抑制されていた行動、特に非合理的、刹那的、攻撃的、反社会的な行動が起きやすくなるという現象を扱った概念である。

ロイ・F・バウマイスター教授は、『Bad is Stronger Than Good(悪いものは良いものより強い)』という論文の中で、この話題を扱っている。彼は、一般的に、悪い感情、悪い印象、悪い反応は、良いものよりも速く形成され、反証しづらいことを発見した。

批判者の中には本質的に有害な人たちがいる。『Journal of Personality and Social Psychology』で発表された研究で、研究者たちは、被験者が未知のトピックに対してどんな反応を示すかを調べた。

その結果、被験者の一部に明らかにある傾向が認められた。被験者の中に特徴的なグループが見つかった。全く予備知識がなくても、「何でも嫌う人たち」は、本能的に理由なく欠点ばかりに目を向けるのだそうだ。

廃止する動きや例

匿名ゆえに誹謗中傷が怖くて匿名では無いFacebookなどに移った人も居る。元Facebookのディレクターから実名を晒した時の方が人はずっと素行が良いなどという発言もある。実際起きた事件では韓国で匿名掲示板での名誉棄損によりある芸能人が自殺。社会問題が懸念され、実名制を導入した。これにより個人への誹謗中傷や名誉棄損が無くなるものと考えられた。しかし1年後問題のある書き込みが0.9%しか減少していない事が判明。(国民性の問題があると言えばそれまでだが・・・)実名制の廃止がなされた。

日本では2ちゃんねるで1000件もの違法な書き込みを放置していたとして管理人の西村博之が書類送検後に不起訴処分された。理由は違法な書き込みを把握出来ていなかったというもの。匿名の巨大掲示板ゆえに起きた事例とも言える。その他の掲示板からIP表示(発信元が分かる)にするべきでは?という意見もあったが、IP表示した板であっても、他サイトではIPが表示されない為に荒らしや犯罪をほのめかす書き込みが後を絶たない。これはIPが公開されても別のサイトだとIPが公開されないという理由から来ているからだろう。

この問題はネット上に匿名というシステムが存在する限り解決は出来ないだろう。

関連項目

外部リンク(参考資料)