ポスト・ロック

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ポストロック (Post-rock) は、ロックの一種。リズム・和音・音色・コード進行などの点で従来のロックには見られない特徴がある。

特徴

同じポストロックと呼ばれるバンドの間でも、音楽に大きな差がある場合が多い。音楽評論家の佐々木敦は、ロックとポストロックの差異として、「クリエイティヴな折衷主義」、「編集とポスト・プロダクション」、「エレクトロニクスの大胆な導入」の3つの特徴がポストロックと呼ばれるものの多くに認められることを指摘している。

サイモン・レイノルズは『オーディオ・カルチャー』(Audio Culture)誌の中で、「ポストロック」と題した記事で以下のように述べている。「バンドがロックからポストロックへと変わる場合、普通は以下のような道筋をたどる。まずは語るような詞、次に意識の流れ、次に響きとしての声、最後が純粋なインストゥルメンタルだ」。

ポストロックの音はアンビエント、ジャズ、エレクトロニカ、実験音楽など多様なジャンルの特色を持っている。またダブ、レゲエ、ヒップホップ、レイブの特徴を利用することで、より中性的かつ柔らかに価値観の転覆を図っている。従来知られていたようなロックの持つ反骨的な含みはもはやポストロックのテーマではなくなった。

ポストロックではモチーフの反復や微小な変化や、非常に広い範囲にわたって強弱を変化させる手法がよく用いられる。部分的にはスティーヴ・ライヒ(Steve Reich)、フィリップ・グラス(Philip Glass)、ブライアン・イーノ(Brian Eno)など、ミニマル・ミュージックの先駆者に似ていると言える。多くの場合ポストロックの楽曲は長く、楽器演奏のみからなり、音色や強弱や響きの変化を繰り返す。

クラブはポストロックの新たな響きに呼応した。アーティストたちはジャンルというレッテルを貼られる外界からクラブへと逃れ、アイデアを交換しあった。初期のポストロックのグループは、1970年代のクラウトロックの強い影響下にあり、「モータリック」と呼ばれるリズムの借用に特徴がある。ギターは、従来のパワーコードに代わって音色や響きをつくるようになった。
ポストロックは、ボーカルのないインストルメンタルの楽曲も多い。しかしまったくボーカルがないというわけでは必ずしもない。ボーカルが入る場合、その用法は従来と違っている。従来は詞の意味を伝えるために聞き取りやすいボーカルが重視されていたが、ポストロックではボーカルは単に楽音として取り入れられるにすぎない。ポストロックのボーカルは柔らかで単調なものや、量が少ないものや不規則なインターバルに挿入されるものが多い。

シガー・ロスは独特のボーカルで知られているが、彼らは「ホープランド語」と呼ばれる言語を造って歌っている。シガー・ロス自身によれば、「ジブリッシュを使っていて、音楽に調和し、ひとつの楽器として機能するようなボーカル」である。

2012年現在のポストロックシーンでは他ジャンルとの幅広い融合、実験が見られる。ブラックゲイズやポストメタルは、その代表である。ブラックゲイズとは、ブラック・メタルとシューゲイザーを融合したジャンルのことを指す。ヘヴィメタルやヘヴィロックにおいては、メルヴィンズの影響を受けたニューロシスやトゥールのようにヘヴィなサウンドにポストロック的なアプローチやアンビエンスを持ち込むバンドが現れ(殊にニューロシスはサンプラーやポストプロダクションの他、トラディショナルな管弦楽器を導入している)、やや時代が下ってから、イェスー(Jesu)やカルト・オブ・ルナ(Cult of Luna)、アイシス(Isis)、ペリカン(Pelican)などはメタルとポストロックを融合させている。融合の結果はポストメタルと呼ばれている。

2012年現在ではスラッジメタルが発展し、ポストロックの要素を取り込み、一部では完全に融合するに至っている。この動きの先駆者としてはジャイアント・スクイッド(Giant Squid)やバトル・オブ・マイス(Battle of Mice)などが挙げられる。代表的なレーベルはニューロ・レコーディングズ(Neurot Recordings)である。ウルヴェル(Ulver)やアルセスト(Alcest)、アルター・オブ・プレイグス(Altar of Plagues)、アガロク(Agalloch)などのバンドはブラックメタルを中心としながら、ポストロックの要素を使う形で両者を融合させている。